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大うつ病性障害の診断について3

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大うつ病性障害の診断について2の続き>


⑧思考力や集中力の減退または決断困難・思考(思路)/ 制止・抑制:内的制止;思考・認知面の障害

尋ねるポイント
「以前と比較して頭の回転が遅くなったように感じませんか?」
「なかなか物事に集中できなくなっているということがありますか?」
「普段より頭が働かず,考えが遅くなったり,考えがまとまらなくなったりしていますか?」
「普段なら問題なく決められることが, くよくよと思い悩み,なかなか決められなくなっていますか?」
「新聞など,ただ字面を追っているだけで,内容が理解できないことはないですか?」

うつ病になると思考力や集中力が低下し,着想も乏しく,あれこれ考えては,堂々巡りし,迷って決められず,理解力の低下や記銘力障害も伴うことによって,仕事や勉学が進まなくなります。さらには判断力や決断力も鈍り,これらが著名であれば,診断や症状評価が困難になる場合もありますので,周囲からの客観的な情報が得られることが望ましいと考えます。うつ病においては,一般的な症状でありながら意外に気づきにくいのは「頭の働きの低下」であり,以前より仕事の能率が悪く,判断に時間がかかり,今までにないミスが多くなった結果,責任感の強い人ほど病気からくるものとは思いもよらず,勘違いして自分を責めてしまいます。そして,ぎりぎりまで元気なふりをして,突然,自殺を考えてしまうわけです。従って,仕事量が変わらないのに残業が増えてきたら,まず,うつ状態を考えなくてはいけませんし,残業が多いから仕事量が増えて,うつ病になったのではなく,うつ病になったから作業効率が低下して残業が多くなったという発想が労働者を扱う管理者や企業側には必要なのです。高齢者であれば主に注意集中や判断,思考,記憶の低下を自覚するので「最近,忘れっぽく,自分がボケてきたな?」と訴えた結果,実際に周囲が認知症の様(仮性認知症)に捉え,一般科医での受診でうつ病が認知症と間違えられることもあります。福田正人先生らの研究グループによる光トポグラフィー検査(近赤外線スペクトロスコピィ:NIRS)に代表される近年の脳機能画像研究からは,うつ病における前頭葉皮質の賦活反応性の低下(男性と比較すると女性や壮年で低下が目立つ)が認められるとの報告が注目されており,うつ病において脳血流や脳代謝が,特に前頭葉で低下していることがわかってきています。

<うつ病の認知機能低下に関する主な特徴>
①集中困難
②否定的な考え
③記憶力低下
④認知力低下(Widlocher,1982)
⑤自殺念慮
⑥妄想的思考
⑦過剰な反すう
⑧問題解決能低下(Harley et al,2006)
⑨歪んだ自己概念
⑩精神運動遅延
⑪視空間学習能力・記憶力,実行(遂行)機能,注意力の低下(Porter et al,2003)
⑫反射欠如
⑬理解力低下
⑭悲観的認識
⑮間違った意思決定

橋本謙二,Ian Hindmaach,笠井清登:うつ病・不安障害治療とシグマ受容体;臨床精神薬理Vol.11,1407-1417,No.7 Jul.2008,星和書店より掲載・追加

⑨死についての反復思考:自殺念慮,自殺企図;認知・思考面の障害

尋ねるポイント
いきなり「死にたいですか?」という表現で直截に尋ねるのではなく,以下の様に間接的な表現での質問から始めることが推奨されます。

「朝,目が覚めなければ,どんなに楽かなと思いますか?」 
「ぽっと消えてなくなりたいと思いますか?」
「生きていても仕方がないと思うことがありますか?」
「事故や病気であの世へ行ったらいいと考えますか?」
「気分がひどく落ち込んで,死について何度も考えるようになっていますか?」

 うつ病のときは,気持ちが沈みこんで辛くてたまらなくなり,「死んだほうがましだ」と考えるようになった結果,自分の気持ちを抑える力が弱くなっているので,思いもよらない思い切った行動に出る可能性が高くなります。自殺対策がうつ病臨床において最重要課題のひとつであることは確かですが,自殺念慮を他と同様の精神病理学的症状と並列するには,いささか無理があり,診断学的特異性は乏しいと一部の気分障害の専門家や研究者達は考えています。うつ病では,(罪業感と同様に)他の抑うつ症状との関連性は乏しく,周囲も本人も理解困難な「原発性自殺念慮」と抑うつ気分や制止,罪業感,悲観的思考などの症状群から二次的に発生した「内因性の基礎を持つ体験反応」(endogen unterbaute Erlebnisreaktion)として解釈が可能な自殺念慮の二つに分けられます。臨床的には,これらの鑑別が重要で,前者であれば,速やかに入院を検討する必要があります。後者の場合は,差し迫った訴えに限らず,例えば「逃げてしまいたい」「全てを投げ出したい」「消えてしまいたい」といった軽いものまでを広義の自殺念慮として認識できるため,治療開始の際,自殺抑止を契約する上でも有効です。一般には自殺の危険性は,特に焦燥感が強い発病初期と精神運動制止が軽減する回復途上期に多い(むしろ単極性より気分変動の幅が大きい双極性障害の場合の方が多い)とされていますが,不安・焦燥優位型の現代型うつ病では,強いメランコリアを示す(ホメオスタティックな安定性が一時期にみられる)極期も含めた全経過中にみられる可能性も留意しておく必要があります。実は,うつ病患者は,決して「死にたい」と思っているわけではなくて,うつ症状の苦痛から一刻も早く逃れたいという困惑や,生きていることが周囲に迷惑を掛けているという罪責感,さらには「自分は生きている価値がない」という無価値感が背景にあることを十分に理解しておく必要があります。
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参考文献・資料
神庭 重信・黒木俊秀(編):「現代うつ病の臨床 その多様な病態と自在な対処法」創元社2009年
濱田 秀伯:症候論5うつ状態 臨床的側面「精神医学対話」弘文堂2008年
坂元 薫:第1部 総論 / 第4章 症候学「気分障害」 医学書院 2008年
内海 健「うつ病の心理 失われた悲しみの場に」東京:誠信書房;2008年
内海 健「うつ病新時代-双極 II 型障害という病」東京:勉誠出版;2006年
阿部隆明:精神病像をともなう気分障害:妄想性うつ病を中心に.臨床精神医学 29(8):961-966,2000年
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by jotoyasuragi | 2010-03-23 10:39 | 心理教育シリーズ

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