2010年 02月 15日
軽躁病エピソードの捉え方2
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<軽躁病エピソードの捉え方1の続き>
しかし,診断学的発展途上にある研究目的のDSM-IVも色々と使えないケースもあります。2012年にはDSM-Vが改訂される予定と聞いておりますが……………
そこで,軽躁病エピソードの問診法としては以下の三点が重要ポイントです。
1. 4日間以上にわたって睡眠要求が減少していたか?
2.高揚した気分だけでなく,運動(行動)過多が観察されていたか?
3.その状態が反復性のものか?
通常,4日以上にわたる喜びの反応が起こることは生涯に1~2回であるために,3回以上の反復がみられれば軽躁状態の可能性が高くなることになります。
それでも軽躁状態の既往がなかった場合は, Potential bipolar(bipolarity)を初診時に確認します。気分障害を多く診る精神科医であれば,以下のGhaemiの双極スペクトラム障害(Bipolar Spectrum Disorder)の診断基準を厳格に使用します。
A.少なくとも1回以上の大うつ病エピソード
B.自然発生的な躁・軽躁病相はこれまでにない(つまり現行診断基準を満たさない病相)
C.以下のうちいずれか1項目とDの少なくとも2項目以上(あるいは以下の2項目とDの1項目以上)があてはまる
1.第一度親族(親子,兄弟)における双極性障害の家族歴:最も強いリスクファクター
2.抗うつ薬によって惹起される躁あるいは軽躁の既往
D.Cの項目がなければ以下の9項目のうち6項目があてはまること
1.発揚性人格(抑うつ状態でない基準線においてマニー型 / 執着性格も含める):気質
2.反復性大うつ病エピソード(>3回以上):経過像
3.短い大うつ病エピソード(平均3ヶ月未満):経過像
4.非定型うつ症状(DSM-IV:過眠,過食,鉛様の麻痺・脱力感の3点を重視):状態像
5.精神病性(精神病症状を伴う)大うつ病エピソード:状態像
6.大うつ病エピソードの若年発症(25 歳以下):経過像
7.産後うつ病:誘発イベント
8.抗うつ薬の効果減弱(wear‐off:急性効果(+)予防効果(-)):治療反応性
9. 3種類以上の抗うつ薬治療への非反応:治療反応性
備考:他のPotential bipolarの予測指標として,広義の混合状態の出現,遷延化したうつ病エピソード,季節関連性(冬季うつ病), Comorbidity(不安障害等)などが挙げられます。
尚, Ghaemiはあまり混合状態そのものを当該診断の中で重要視していません。
また,混合状態はBD IIの現行診断基準では除外項目となり,抗うつ薬使用時のみに認める軽躁状態はBD I及びBD II両診断基準の除外項目になっていますが,これらの臨床的問題に関しては,後日,述べていきます。
<参考文献・その他>
1)Yatham LN,Kennedy SH,Schaffer A,et al:Canadian Network for Mood and Anxiety Treatments(CANMAT)and International Society for Bipolar Disorders (ISBD) collaborative update of CANMAT guidelines for the manegement of patients with bipolar disorder:update 2009:Bipolar Disord 11:225-255,2009
2)Ghaemi,S.N.et al.:The bipolar Spectrum and the antidepressant view of the world.
J PsychiatrPract 7:287-297,2001 / Ghaemi SN, Mood Disorders,2nd edition,2008
3)Ghaemi SN.Mood Disorders:A Practical Guide(2003),2nd edition.Philadelphia:Lippincott Williams&Wilkins;2008
4)Angst「プリマリ・ケア医が軽躁病エピソードを確認するための質問項目」2005年
5)内海 健「うつ病新時代-双極 II 型障害という病」東京:勉誠出版;2006年
6)内海 健「うつ病の心理 失われた悲しみの場に」東京:誠信書房;2008年
7)神田橋 條治「双極性障害の診断と治療-臨床医の質問に答える-」第1回福岡精神医学研究会講演記録:臨床精神医学 34(4):471-486,2005年
8)秋山 剛「双極II 型への関わり-職場、家族への援助を含めて」:双極性障害委員会企画シンポジウム 講演 第6回日本うつ病学会総会 品川プリンスホテル;2009年
十全病院 / Jクリニック 岡 敬
<軽躁病エピソードの捉え方1の続き>
しかし,診断学的発展途上にある研究目的のDSM-IVも色々と使えないケースもあります。2012年にはDSM-Vが改訂される予定と聞いておりますが……………
そこで,軽躁病エピソードの問診法としては以下の三点が重要ポイントです。
1. 4日間以上にわたって睡眠要求が減少していたか?
2.高揚した気分だけでなく,運動(行動)過多が観察されていたか?
3.その状態が反復性のものか?
通常,4日以上にわたる喜びの反応が起こることは生涯に1~2回であるために,3回以上の反復がみられれば軽躁状態の可能性が高くなることになります。
それでも軽躁状態の既往がなかった場合は, Potential bipolar(bipolarity)を初診時に確認します。気分障害を多く診る精神科医であれば,以下のGhaemiの双極スペクトラム障害(Bipolar Spectrum Disorder)の診断基準を厳格に使用します。
A.少なくとも1回以上の大うつ病エピソード
B.自然発生的な躁・軽躁病相はこれまでにない(つまり現行診断基準を満たさない病相)
C.以下のうちいずれか1項目とDの少なくとも2項目以上(あるいは以下の2項目とDの1項目以上)があてはまる
1.第一度親族(親子,兄弟)における双極性障害の家族歴:最も強いリスクファクター
2.抗うつ薬によって惹起される躁あるいは軽躁の既往
D.Cの項目がなければ以下の9項目のうち6項目があてはまること
1.発揚性人格(抑うつ状態でない基準線においてマニー型 / 執着性格も含める):気質
2.反復性大うつ病エピソード(>3回以上):経過像
3.短い大うつ病エピソード(平均3ヶ月未満):経過像
4.非定型うつ症状(DSM-IV:過眠,過食,鉛様の麻痺・脱力感の3点を重視):状態像
5.精神病性(精神病症状を伴う)大うつ病エピソード:状態像
6.大うつ病エピソードの若年発症(25 歳以下):経過像
7.産後うつ病:誘発イベント
8.抗うつ薬の効果減弱(wear‐off:急性効果(+)予防効果(-)):治療反応性
9. 3種類以上の抗うつ薬治療への非反応:治療反応性
備考:他のPotential bipolarの予測指標として,広義の混合状態の出現,遷延化したうつ病エピソード,季節関連性(冬季うつ病), Comorbidity(不安障害等)などが挙げられます。
尚, Ghaemiはあまり混合状態そのものを当該診断の中で重要視していません。
また,混合状態はBD IIの現行診断基準では除外項目となり,抗うつ薬使用時のみに認める軽躁状態はBD I及びBD II両診断基準の除外項目になっていますが,これらの臨床的問題に関しては,後日,述べていきます。
<参考文献・その他>
1)Yatham LN,Kennedy SH,Schaffer A,et al:Canadian Network for Mood and Anxiety Treatments(CANMAT)and International Society for Bipolar Disorders (ISBD) collaborative update of CANMAT guidelines for the manegement of patients with bipolar disorder:update 2009:Bipolar Disord 11:225-255,2009
2)Ghaemi,S.N.et al.:The bipolar Spectrum and the antidepressant view of the world.
J PsychiatrPract 7:287-297,2001 / Ghaemi SN, Mood Disorders,2nd edition,2008
3)Ghaemi SN.Mood Disorders:A Practical Guide(2003),2nd edition.Philadelphia:Lippincott Williams&Wilkins;2008
4)Angst「プリマリ・ケア医が軽躁病エピソードを確認するための質問項目」2005年
5)内海 健「うつ病新時代-双極 II 型障害という病」東京:勉誠出版;2006年
6)内海 健「うつ病の心理 失われた悲しみの場に」東京:誠信書房;2008年
7)神田橋 條治「双極性障害の診断と治療-臨床医の質問に答える-」第1回福岡精神医学研究会講演記録:臨床精神医学 34(4):471-486,2005年
8)秋山 剛「双極II 型への関わり-職場、家族への援助を含めて」:双極性障害委員会企画シンポジウム 講演 第6回日本うつ病学会総会 品川プリンスホテル;2009年
十全病院 / Jクリニック 岡 敬
by jotoyasuragi
| 2010-02-15 15:13
| 心理教育シリーズ