2007年 04月 13日
心理教育シリーズ Vol.1 「自律神経失調症」
日本心身医学会では「種々の自律神経系の不定愁訴を有し、様々な検査で器質的異常が認められず、かつ顕著な精神障害がないもの」と暫定的に定義されていますが、病名ではありません。
神経系には生体の内外環境から刺激を受けたのちに、その情報を解釈或いは統合し、受けた刺激に適する反応を選び出すという能力があります。人体の神経系における高度に発達した部分(大脳皮質)のおかげで、生存のための本能行動以外に理性に基づく人間的ないし協調的行動が得られるのです。神経系には大きく中枢神経系と末梢神経系に分かれ、両者の一部によって構成される自律神経系が挙げられます。自律神経系は副交感神経系と交感神経系に分かれます。
身体は緊急事態に対する用意をいつも整え、いざという時いつでも行動できる準備をしているのです。危険の殆どが、肉体的な攻撃であった頃の原始的な反応態勢-つまりそれから逃げるかあるいはそれに立ち向かうか?です。一般的な肉体の不安反応は、身体的な自己統制(コントロール)によって多様化されています。これに対する行動を起こさせる準備をする(例えば心拍数を増やし、血圧を上昇させる)警戒反応は交感神経組織を媒介としています。この組織が活動的すぎると、過剰な交換神経の働きを抑えてバランスを取るため、副交感神経組織の活動が促されます。副交感神経の主な機能の一つは、腸の活動を活発化し、膀胱を収縮させることです。その結果、不安は間接的な方法で下痢や頻尿の原因になるのです。感情に伴う身体変化は、主として自律神経機能の急激な変動ですが、悲しみの感情には流涙を伴い、怒りや恐怖のさいには交感神経の興奮状態として心拍数を増やし、頭痛、動悸、冷え、顔面蒼白、頻脈、立ちくらみや血圧上昇、呼吸頻数、瞳孔散大、発汗、立毛、筋緊張亢進、振戦、吐き気、などが生じます。
自律神経失調は様々な要因によって自動的に全身の器官を調節している自律神経(交感神経と副交感神経)のバランスが崩れた(外からの刺激に対して自律神経が体を守ろうと防御反応を起こした)状態をさし、そのバランスが崩れると全身機能に支障をきたし、様々な身体症状が出ます。問題は説明を受けた後にどうするか?という姿勢が大切です。
鑑別が必要な身体疾患としては、貧血や糖尿病、不整脈、甲状腺疾患、メニエール病、更年期障害(ホルモン療法が有効)、下垂体腫瘍などが挙げられ、内科や婦人科、耳鼻咽頭科、脳外科などで一度は精査する必要があります。最も間違いやすい病気が心身症、うつ病や適応障害、パニック障害や社会恐怖等の不安障害です。
ストレスを解消できず溜め込んでしまい、本能や感情が抑え込まれ、自律神経が乱れたことが多くの原因として挙げられています。
誘因として
①家庭や職場の人間関係(業務形態及び精神衛生上の環境)、転勤等の生活環境の変化
②生真面目で責任感が強い完璧主義、几帳面で心配性、内向的でストレスに弱い性格
③飲酒や睡眠不足、不規則な生活、疼痛や温度変化、騒音等の物理的ストレス
④思春期や更年期、生理前後、出産後のホルモンの変調
⑤姿勢や骨格の歪み
等が挙げられ、様々な原因が複雑に絡み合っていると考えます。
自律神経を整えるには
①十分な睡眠を取り、生活のリズムを夜型から朝型へ変える
②糖分や油分、アルコールを控え、栄養のバランス(ビタミンA、B、C、E群、その他カルシウムを適度に摂取)と時間を考えた食事をとる
③ストレスを溜めない方法(五感を司るリラックス法:起床時の日光浴、ぬるめのお湯による半身浴、アロマテラピー、ハーブティーを飲む、静かな音楽を聴く)
④カウンセリングを併設している心療内科で心理検査を受け、ストレスに対する気付きを行い、ストレスに対する認知の仕方や性格・行動特性、耐性などを把握してもらいます。その上で必要ならば、医師から薬物療法(抗不安薬や抗うつ薬、漢方)やカウンセリング(ストレス耐性強化、感情処理のコントロール)を受け、臨床心理士による自律訓練法(リラクセーション)や認知療法を受ける
等が挙げられます。
ストレスと付き合う10カ条として
①完璧主義を捨てる
②現実を直視する
③自分なりのストレス尺度を持つ
④心から打ち込める趣味を持つ
⑤辛くなったら悲鳴を上げる
⑥悩みを打ち明けられる心の友を持つ
⑦軽い運動で良い汗をかく(平常心を保つストレッチやヨガはセロトニンを活性化させます)
⑧先入観を持って人と接しない
⑨解決を先に延ばさない
⑩ノーと言う勇気を持つ
等が挙げられ、これらを参考にして治った方々も大勢いらっしゃいます。結果として治すには症状に苦しんだのと同じ時間が必要と思われ、何よりも対話のできる医師との信頼関係が大切です。
Jクリニック(http://www.jotoyasuragi.jp/clinic/index.html)
院長 岡 敬
by jotoyasuragi
| 2007-04-13 15:43
| 心理教育シリーズ